モバイルバッテリーは、私たちの生活で無くてはならない電源ですが、メーカーや使用方法を誤ると発火の確率が高まったり、PSE表示の無い中国製モバイルバッテリーが爆発して死亡したという報告もあります。
有名モバイルバッテリーメーカーのAnkerでは、2023年に日本で初の発火が報告され、メーカーより自主回収したという火災事例もあり、PSEマークのついたモバイルバッテリーと言えど安心できないことがわかります。
メーカー問わず、私たちが出来るモバイルバッテリー発火の対策としては、強い衝撃を与えない・分解しない事を守れば、普段使用で爆発や発火確率が上がる事はまずありません。
また、人が手で持っている高さから落とした位では、爆発や発火の心配はないので大丈夫ですが、高い所から落としたりした場合はこの限りではありません。
モバイルバッテリーにはリチウムイオン電池が使われており、本記事ではリチウムモバイルバッテリーを対象に、発火の確立や火災事例、安全対策にについて解説します。
PSE表示の無いモバイルバッテリーは、下記の火災事例にもある通り、発火確率を高め大変危険ですし、本来PSE表示の無い製品は販売自体が違法なので、誤って購入しないように注意してください。
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記事の要約とポイント
- PSEマークの付いて居ないメーカー不明のモバイルバッテリーは発火確率が高く、発火の原因となる事がある。でも、落としたくらいでは大丈夫!
- モバイルバッテリーの最近の火災事例は電車内でPSEマークのついていない中国製モバイルバッテリーが発火したり、リチウムイオン電池をそのまま捨ててゴミ収集車が発火した!
- モバイルバッテリーは内部の液が高温でガス化し、爆発して死亡した事故もある。Ankerのモバイルバッテリーは2023年日本で発火報告があり、自主回収した。
モバイルバッテリーが発火する確率は?原因や発火したらどうする?
結論から言って、モバイルバッテリーが発火するかどうかや発火の確率や原因は、モバイルバッテリーの種類によるとしか言いようがありません。
発火するにはいくつかの原因がありますので、発火したらどするか対処方法を含めて解説します。
詳しくは以降の見出しで解説しますが、モバイルバッテリーなら何でも発火するというわけではありません。
モノによっては、加熱したり爆発したりと症状は様々ですが、特に危険なモバイルバッテリーがリチウムイオンバッテリーです。
リチウム金属はイオン化傾向の高い金属なので、空気や湿気に触れると激しく燃焼します。
燃焼の仕方もかなり激しく、ただ焚火のように燃えるだけではなく、内部で発生したガスが電池の外装を爆発させる事もありますし、燃え方はさながらガスバーナーのようです。
通常の焚火を水をかければ火が消えるのは常識ですが、リチウム金属は水や空気と反応して燃焼するので、水をかけても消えませんし、逆効果です。
モバイルバッテリーに使われるリチウムイオン電池については、以下の記事が参考になりますので、併せてご覧ください。
発火確率の高いモバイルバッテリーとは?
リチウム金属
イオン化傾向
消えない
空気
水
冒頭で解説した通り、最も発火確率の高いモバイルバッテリーは、リチウム金属を使用したモバイルバッテリーで、イオン化傾向の高いリチウムが使われています。
このリチウムは水や空気に触れて反応するので、通常の消化方法では消えない場合が殆どです。
- リチウムイオン電池って何?発火するモバイルバッテリーはリチウムだけ
- 発火確率や原因・発火した時の消方法と発火しない対策について解説
- モバイルバッテリーの種類はリチウムイオン電池だけ?発火対策
- モバイルバッテリーにPSEマークがつく大切な基準について解説!
- バッテリーが原因で発火!死亡事例もある飛行機事故
- 水 VS 粉 VS 二酸化炭素!最強の消火器はどれだ!?
リチウムイオン電池って何?発火するモバイルバッテリーはリチウムだけ
モバイルバッテリーには様々な種類がありますが、使われるバッテリーの種類は、近年ではリチウムイオン電池が主流です。
このリチウムとはどのような物質で、なぜ発火確率が高いにも関わらず、モバイルバッテリーに使われるのでしょうか?
参考までに、リチウムイオンバッテリーは、モバイルバッテリーだけに関わらず、最近では以下のような災害時のポータブル電源のバッテリーとしても使われています。
その背景には、リチウムという金属が鉛に比べてイオン化傾向が高く、小型軽量であるからです。
リチウムイオン電池に使われるリチウムとは金属の事で、金属と言えばとても固いイメージがありますが、リチウムは他の金属と比べてとても軽く、密度も低いので、刃物で切れる程柔らかいのが特徴です。
イオン化傾向と反応性も高く、直ぐに電子がなくなり陽イオンに変化するので、これが反応性の高さでもあります。
リチウムは、今回紹介しているモバイルバッテリー以外にも、うつ病の治療薬として使われる事もあるようです。
リチウムはリサイクルも可能で、繰り返し使用できモバイルバッテリーにおいては、他の電池と比べてメモリー効果が無いため、繰り返し充電しても電圧が低下する事がありません。
例えば、他のニッカド電池や鉛バッテリーはメモリー効果も激しく、鉛バッテリーに関しては大変重く、希硫酸を使用し危険な事もありますし、反応時に水素を発生させます。
鉛バッテリーは主に車のバッテリーに使用される大容量バッテリーです。
今回の記事では対象外ですが、鉛バッテリーに関するメンテナンスや、電圧が低下して使えなくなった鉛バッテリーの復活方法はこちらの記事で詳細に解説していますので、ぜひご覧ください。
\車の鉛バッテリーを復活させてリサイクル再生バッテリーを作ろう!/
大きく分けて、リチウムがモバイルバッテリーに使われる理由は以下の二点です。
何故、モバイルバッテリーにリチウムが使われるのかを一度纏めると、何度使用してもメモリー効果が起きないので電圧が低下しない為と、リチウムは金属密度が低いので、単位当たりの反応面積を稼ぐことが出来るので小型化し易い。
発火原因・発火した時の消方法と発火しない対策について解説
リチウムはイオン化傾向が高く、反応性の高い金属であることは上記の見出しで解説した通りです。
では、この発火しやすいリチウムが発火する原因と、発火した時の消化方法や、発火しない対策について、私たちが出来ることを解説します。
リチウムイオン電池は、内部構造が絶縁体を真ん中にして、両側を金属で挟んだような構造で、内部が液体で満たされています。
この外装は、反応しやすいリチウムを保護するためにとても強固に作られていますが、この外装が破れ、内部のリチウム金属が空気や水に触れると一瞬にして発火する原因になります。
発火確率としてはそれほど高くなく、後ほど詳しく解説しますが、リチウムイオン電池のモバイルバッテリーの発火原因は、衝撃や外装破れだけが原因ではありません。
他にも、過充電や過放電の充電状態の変化も事故の原因になります。
電池は自然放電という現象があるので、何らかの保護回路を使用してその余剰分を担保することで放電対策できなければ危険です。
そのまま放置しているだけでも放電するので、自然にモバイルバッテリーが発火する原因になるという事です。
ですので、発火確率を抑え、発火しない対策として最も重要な事は、リチウム金属を外気や水分に触れさせない強固な外装と、過充電・過放電を抑える保護回路が発火の対策につながるという訳です。
続いて、発火した時の対策ですが、これはかなり難しいです。
水をかけてもほぼ消えることは無く、消火は極めて困難と言えます、そもそもリチウムは外気との反応性が高いため、油に入れて保管されています。
反応したリチウムは、少しの消火液や水では消えることが殆どなく、水が流れた個所からまたすぐに発火してしまうので、自然に燃え尽きるまで安全な場所に避難するのが一番です。
東京消防庁の案内には大量の水で・・・と書かれていますが、これは判断を誤ると大事故につながる可能性があります。
他の記事でも何度も解説していますが、消火器は本当に二酸化炭素消火器がお勧めです。
粉タイプは、例え消化できたとしても、他の部分への影響が大きく、明らかに二次災害と呼べるレベルで粉材の影響が大きいからです。
二酸化炭素消火器なら、どこへ噴射しても揮発して無くなるので、消火後の清掃の手間が無くなるという事です。
ただ、初期投資が若干高めですが導入する価値は十分にあるでしょう。
リチウムそのものを大量の水に入れた場合、反応が一気に進み爆発する危険性もゼロではないからです。
東京消防庁の案内をもう一度よく見ると、”消化した状態で大量の水”と書かれています。
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-kouhouka/pdf/281222.pdf
リチウム金属が発火した時は、東京消防庁の案内にもある通り、あくまで自然消化した状態で大量の水をかけるという事です。燃焼中のリチウムイオン電池に水をかけても意味が無い(火は消えない)のでご注意ください。
その証拠に、リチウム金属を水に入れた下記の動画がありますのでご覧ください。
動画の様に、バケツに水を入れた状態でリチウムを入れると、消える事無く水に浮いて発火し続ける事がわかります。