パソコンに水をこぼした!電源がつかない時の対処法や注意点に関する知恵袋について解説します。
パソコンの液晶の水シミはエタノールで簡単に落ちますし、ノートパソコンにお茶や水をこぼした場合も、純水で洗浄すれば大丈夫な事も多いです。(但し、電源が入ってない事前提ですが)
今回の記事ではパソコンに水やお茶をこぼした!電源が入らない・水没した時の乾燥時間の知恵袋についてお話しします。
他の記事を読んでも、水で洗う・ふき取る・乾燥する等、どれも当たり前で誰でも思いつくような対処方法の記事ばかりが目立ち本質的な解決になっていません。
そこで、元電気電子工学科で数多くの関連会社で勤務経験のある筆者が、パソコンに液体をこぼしてしまった時の本当の解決方法について解説します。
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パソコンに水をこぼした!電源がつかない時の知恵袋。乾燥時間は?ポイント
- パソコンに水やお茶をこぼした!電源がつかない時は、純水で洗浄すれば大丈夫な事が多い
- 液晶の水シミはエタノールで洗浄すれば落ちる!但し多量に使い過ぎると変色の危険性も
- パソコンが水没した時の乾燥時間は環境によりけりだが、分解して一週間ほど乾かせば大丈夫
パソコンに水をこぼして電源がつかない時の知恵袋!感電対策第一
結論から言いますが、パソコンに液体をこぼしてしまった場合、用意するものは『純水』です。
他の記事で書かれている、水で洗って乾燥!拭いて数日放置して乾燥は、正直言って無意味です。
なぜ、こんな無意味な対処方法が世に氾濫してしまうのかというと、水やお茶に含まれる成分や、電気の基本的な知識について無知な方が多すぎる事が原因です。
パソコン屋さんの書いた記事でも同じような無意味な対処方法が書かれている事が多く、驚きますが、ある意味仕方無い事です。
彼らはハードウェアやパソコンの関連知識に関するプロではありますが、電気に関しての基本的な知識は素人です。
では、なぜパソコンに水をかけて洗浄したり、ふき取って乾燥する事が無意味なのか具体的に解説します。
まず、液体には導体と絶縁体が存在し、水・お茶・コーヒーは導体で、早い話が電気を流す性質を持っています。
これは、水やお茶の内部に含まれるミネラルが電気を通す働きをするので、これがパソコンが起動しなくなる原因です。
分かりやすく解説すると、導体である水がパソコン内部の基盤に浸入すると、めちゃくちゃに内部回路を接続し、正しい命令や処理が実行されない事が原因です。
一方、半導体の製造現場で使用される水は純水で、ミネラルや不純物を含まない水の事です。
不純物を一切含まない水は、絶縁体で電気を通す事がありませんので、半導体の洗浄に使えるという訳です。
水で洗って乾燥させた場合、一見綺麗になったように見えますが、乾燥した後に残ったミネラルのシミや不純物が導体の役割を果たし、いつまでたってもパソコンが起動しない原因です。
パソコンにお茶や水をこぼしてしまった場合!感電リスクの知恵袋
パソコンに水をこぼして電源がつかない時に焦りますね!そんな時の知恵袋について解説します。
まずは、感電対策が第一です!パソコンに水やお茶をこぼして動作しなくなる事よりも、感電のリスクが一番危険ですので、パソコンに液体をこぼした場合は直ぐに電源を抜いて冷静に対処しましょう。
特に注意が必要なのが電源周りで、パソコンの電源はAC100Vからパソコンが動く電圧まで降圧したり、ACからDCへ変換する役割を持っていますが、この中にはコンデンサーという部品が入っており、これが電気を貯める電池のような役割をしています。
このコンデンサーには220V等の高電圧が蓄電されている場合もあり、電源を切っても直ぐには放電されず、濡れた手で電源を触ると感電の危険があり非常に危険ですので、パソコンにお茶や水をこぼしたり、水没してしまった場合は、たとえ電源を抜いたとしても感電の注意が必要です。
もう一つ、BIOSの設定を保存するのに内部にはボタン電池が入っていますが、これも分解して直ぐに抜く必要があります。
古い場合のPCには電源を抜いても別の危険も存在します。
基本的にパソコンの電源周りは新旧のPC問わず、高電圧が蓄電されている事が多く共通の危険性がありますが、古いパソコンには別の危険が存在します。
古いパソコンには、液晶バックグラウンド用照明として、CCFLが使用されていますが、このCCFLは放電管であり、動作電圧が非常に高い(約3000V)こともあり、感電すると非常に危険です。
パソコンに水やお茶をこぼしてしまった場合大丈夫か?適切な対処法
冒頭のリード文で解説した通り、まずは電源を抜いて感電対策をすることが先決ですが、電源がONの状態でパソコン内部に水やお茶などの液体が入った場合の故障は深刻で、殆ど諦めて買い替える事をおすすめします。
ただ、先に紹介した純水を使い、パーツを全て分解して純水で洗浄する事でワンチャン回復する可能性もゼロではありません。
大丈夫かどうかは正直運次第で、純水で洗浄しても動かないならあきらめるしかありません。
奇跡的に電源投入前に、水やお茶をこぼした場合は、一旦すべてのパーツを分解した上で、純水で洗浄すると回復する可能性がかなり高いです。
パソコンの液晶画面の水シミはエタノールで掃除すれば大丈夫
パソコンの液晶画面の水シミって気になりますよね?とくに汚れたモニターを雑巾で水拭きすると、必ず水シミが残り、電源を切った後の真っ暗な画面では、液晶画面の水シミが特に気になります。
水シミの殆どは、水に含まれるカルキやミネラルが原因ですので、このミネラルやカルキをうまく取り除く事が出来ればモニターは綺麗になります。
そんな時に活躍するのがエタノールやマイクロファイバータオルです。
論より証拠、理屈抜きにしてとりあえずエタノールを少量ティッシュペーパーに含ませてモニターの水シミをふき取った後に、マイクロファイバータオルで拭きあげると、液晶画面の電源をOFFにしても全く水シミが残りません。
パソコンの液晶画面には、仕組み上静電気が発生し易いので、静電気防止用のクリーナーで液晶画面の水シミを清掃するのもおすすめの汚れ対策です。
静電気が発生すると、特に面積の広い液晶画面では、汚れを呼び込みやすい状況にあるので、静電気防止用のクリーナーでふき取るのも効果的な対策です。
水シミに効果的な成分はエタノールの他に、界面活性剤があります。
界面活性剤は水と油のように互いに混ざりにくい物質を、互いに混ざりやすくする性質を持つもので、シャンプーや洗剤など多くの洗剤に配合されています。
界面活性剤には、大きく分けて 「非イオン系界面活性剤」、「陰イオン系界面活性剤」、「陽イオン系界面活性剤」、「両性イオン界面活性剤」 の4種類があります。
水シミは、水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が乾燥して固まったもので、水シミはアルカリ性のため、酸性の洗剤で中和することで落とすことができます。
界面活性剤は、水シミの成分であるカルシウムやマグネシウムを包み込むことで、水に溶けやすくする効果があり、界面活性剤の洗浄力によって、水垢を剥がす効果もあります。
しつこい日常の汚れの掃除はハイターが便利です!ハイターで出来る掃除の方法は下記の記事で解説しています。
パソコンが水没した時の乾燥時間!水をこぼしたけど乾燥すれば動く?
先ほど解説した通り、パソコンが水没した時の対処方法は乾燥時間を気にすればよいわけではない事がご理解頂けたと思います。
特に災害でパソコンが水没するような深刻な状況の場合、単に水やお茶をかけた場合よりも状況は更に深刻ですので、乾燥を待ったところで回復する見込みは少なく、例え回復しても不調が頻繁に起こる可能性が高いです。
もう一度、理由をおさらいすると、水にはカルシウムやミネラルなどの電気を通しやすい不純物で溢れています。
乾燥させたところで、これらの微細なカルシウムやミネラルはPC内部の基盤に侵入し、端子間で導体の役割を果たすので、乾燥させても無意味な理由です。
たとえくまなくふき取ろうとしても、部品全てを満遍なくふき取るのは不可能に近い作業で、それならば、一旦分解して純水で洗浄した方が望みがあります。
乾燥というステップはあくまでパソコン内部の不純物を全て取り除けた状態で行う最終工程で、行うもので、水で流して乾燥という行為に意味はありません。
もう一つ重要な点が、純水で洗浄後の乾燥ですが、出来ればエアーコンプレッサーを用意して水気を直ぐに飛ばしてください。
エアーダスターなど、風量が弱くコスパも悪い道具では、パソコンの機器全ての水を吹き飛ばすには到底足りず、エアーコンプレッサーを用意して吹き飛ばすしか方法はありません。
半導体は熱に弱いので、ドライヤーで乾かすなどは愚の骨頂です。
純水で洗浄後、タオルなどでふき取った場合、その布に含まれるゴミや不純物がマザーボードや電源の基盤に付着する事になるので、タオルでふき取るのはやめましょう。
パソコンの製造をしている現場を見たことない方なら無理もない発想だと思いますが、パソコンを製造する時は、クリーンルームと呼ばれるチリ一つ落ちる事も許されないとても清潔な環境で製造されており、当然温度管理や湿度管理、静電気に対する対策も徹底されています。
そんな環境で製造されたパソコンが、お茶や水をこぼし、ましてや水没したパソコンを乾燥させれば動くなどと考えるのはあまりにも浅はかです。
パソコンという超精密機器が、クリーンルームという如何に厳しい環境で製造されているかは、『蒲田工業株式会社』さんのウェブサイトを見るとわかります。
パソコンに水やお茶をこぼした時に分解する工具について解説
パソコンに水やお茶をこぼした時に、工具で分解する必要がありますが、その前にもう一度作業ステップについてタイムラインでおさらいしておきましょう。
- STEP1電源を切る(感電事故防止)
とにかく故障の心配よりも安全が最優先!電源が入っているという事は、感電のリスクがあるので水をこぼした場合は直ぐにパソコンの電源やノートパソコンならバッテリーを抜こう。
但し、電源周りは電源を抜いても直接素手で触らない事!最悪感電死します。 - STEP2パソコンを工具で全て分解
パソコンを自分で出来る部分まで全て分解しておく。この時、電源を切っても電源周りの感電には注意してください。
- STEP3純水で洗浄
水没したり、お茶や水をこぼした部品を純水で綺麗に洗う。何度も綺麗に洗い、純水は惜しみなく使おう!使いまわしでも構わないが、最後には純水で仕上げ洗浄しよう。
- STEP4水気飛ばし
エアーコンプレッサーで水気を飛ばし、タオルやウエスで拭かない事!タオルやウエスに含まれる汚れがボードについて純水で洗浄した意味がありません。但し、キムワイプは許可する。
- STEP5乾燥
エアーコンプレッサーで全ての水気を飛ばしても、内部には必ず飛ばし切れていない水分が含まれているので、最低一週間は自然乾燥させよう。
分解する前にもう一度まとめると、とにかく電源を抜いて感電に注意!電源を抜いたからと言って、パソコンの電源周りは絶対に素手で触らない事!(これが最も重要)
パソコンを出来る限り分解して純水で洗うが、タオルやウエスで拭くとその不純物で故障するので、NGです。
但し、キムワイプだけはOKとしますが、キムワイプは非常に高価です。
下手に拭いたりすると、パソコンの部品は繊細なので、静電気で故障しますし、第一布が端子に引っかかって物理的に変形したりする原因になります。
二次災害を避ける為、必ずコンプレッサーを用意しましょう!コンプレッサーのようなものが無い!と、贅沢は言ってられません。
エアーコンプレッサーの使い道や選び方はこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
自分でパソコンを復活させたいなら、最低限コンプレッサーは必要です。
他には、静電対策用の手袋と、精密ドライバー類が必要です!内部は配線をインシュロックでとめている場合もあるので、追加のインシュロックの準備も必要ですし、インシュロックを切るにはニッパーがあると便利です。
パソコンに水をこぼした!電源がつかない時の知恵袋。乾燥時間は?まとめ
世に溢れた電子機器の水没事故や、お茶や水をこぼしたという一般的なものまで、間違えた対処方法と誤情報で溢れていたので、パソコンに水やお茶をこぼして、電源がつかない時の対処方法や知恵袋について解説しました。
パソコンに水やお茶などの液体をこぼした時は、”純水”で洗浄するのが最も確実です。
水に含まれる不純物から、液体をこぼした時に水をかけてふき取って乾燥という方法は完全な間違いであり、正しい対処方法ではありません。
そもそも、水に含まれるミネラルやカルシウム、カルキなどが導体の役割を果たし機器を誤動作させるので、水で洗っても効果が無いばかりか二次災害の原因になります。
勿論、乾燥させても意味がなく、残ったミネラルが導体の役割を果たし、電子機器を誤動作させます。
前述した通り、電子機器はクリーンルームと呼ばれるチリ一つ落ちる事が許されない厳しい環境で製造されており、電子機器とはそれほど繊細な物なので、水をかけてふき取った程度で回復するわけがないのです。
不純物の無い水は純水と呼ばれ絶縁体で、電子機器の洗浄にも使われますので、この純水であれば洗浄する事に意味があります。
但し、純水でふき取ってからの後処理も重要で、布やウエスでふき取ると今度は静電気で故障したり、繊細な部品を物理的に変形させる原因になるので、コンプレッサーは必須です。
純水で洗って、コンプレッサーで乾燥させても内部には水が残っていますので、一週間は乾燥させて様子を見ましょう。
尚、作業前は感電にだけは十分注意してください。
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